音楽療法コラム-アンチエイジングと音楽療法 -1-

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音楽療法コラム -Ⅱ-

アンチエイジングと音楽療法 -1-


昨今は、女性だけでなくて男性も、「アンチエイジング」「アンチエイジング」と、えらい若返りブームではありませんか?

iPS細胞の研究やガンワクチンの普及が進んだ未来は判りませんが、少なくとも現在のところ、若返りは実際にはない話で、整形しようが痩せようが、誰でもしっかり「生活年齢」という歳は取っていますし、それだけの年数、この酸化を促す大気や抵抗を強いる重力の中で細胞を酷使して生きているわけですから、まあいわば「老化遅延」でしかないんですけど。

でも、若く見られても心の成熟度まで若く見られて、逆に腹が立つ事もありませんか?
要は、いかに人格的に成熟し、いかに良く笑って暮らせ、しかもいかに歳より若く見られるか、というところに、「アンチエイジング」の魅力はあるのかな。

「笑う門には福来たる」と言いますが、これが今、注目のNK細胞の活性化と関係があることは、大分広く知られて来ました。

さらに、笑うだけでなく、同時におしゃべりと軽い運動も行う事ができると、40歳から衰えるという「ワーキング・メモリー」と呼ばれる日常の短期記憶力を鍛える事ができるそうです。そんな方法、いくつあるでしょうか。
笑う事と運動する事はともかく、まず「一人で」は難しいのがおしゃべりですよね(一人で笑っている姿も想像するとちょっと引きますが…(笑)。

そうなんです。グループ・セラピーは言うに及ばず、個人療法であってもセラピストと行う音楽療法は、なんと、この3つの条件を一通り満たす事のできる方法の一つになっているではありませんか!

でもここで、さらに新たな事実について考えてみましょう。
(そう単純なものではありませんよ。)

(1) アーティストを目指す若者たち

音楽は、魅力ある活動です。思春期になると、多くの若者が、一度は歌手や楽器奏者といったミュージシャンになる事に憧れます。そして実際に、音大に限らず、音楽専門学校に通う人も数多くいます。ところが、こうした音楽を専門に学ぶ若者の中には、心の病にかかっている人もまた目立つ、と聞きます。

カエル操作.JPGそこまで行かなくても、悩んでいたり、昼夜転倒の生活をしていたり、男子でも将来の自立に向けて何も考えていないように見える子達が在学している割合は、他の領域の教育機関より多そうです。勉強中からアーティストを気取っているうちにそうなっちゃったんでしょうか…。それとも、自分の生き方に悩んでいるからこそ、音楽に救いを求めた人たちなのでしょうか…。これは一体何故でしょう?

(2)音楽療法士を目指す人たち

音楽療法士を目指す人も増えて来ましたが、そうした人の中には、実際にうつ病になった経験のある人や、なんらかの心身症を抱えている人、さらに、難病を抱えている人や引きこもり体験をした事のある人が意外に多くいる事を耳にします。
中には、これらの病や障がいを克服した体験をセラピストとして生かしたいと志した方もいらっしゃるのでしょうが、ご自身の悩みを乗り越える過程を学ぼうという目的の方も多いように思われます。病や障がいについて深く何かを思い知らされる体験のなかった人に音楽療法士を目指せ、と言うわけではありませんが、自己治療のために音楽療法士になっても、治療者としてのモチベーションの維持になかなか苦労されておられるのではないかと思います。それは一体何故か?

(3)統合失調症とアンチエイジング

10年ぶりに精神科臨床に戻ってみて改めて実感したのですが、デイケアや病棟できちんと治療を受けながら人としてのQOLを保って生きて来られた統合失調症の患者さんたちは、見事なくらい老けていないのです。白髪が増えたな、というくらいはあるのですが、顔のシワなどは増えてはおらず、10年前と殆ど見た目が変わりません。
「薬の力もあって、生きるストレスを軽減できているせいか、患者さんたちは老化しないよね」
と、以前、ある病院のスタッフがおっしゃっていましたが、これも一体、何故でしょう?

さあ、皆さんは、この3つの事から、何をお感じになったでしょうか。
確かに、若く美しくみられると、それだけで幸せな気持ちになれるし、まだ頑張れる、という、すべての努力へのモチベーションが湧いて来たりもしますね。
だから人は、心身が健康である為の

「アンチエイジング」に惹かれます。
でも、ただ若く見られたいだけなら、病気になった方が永く老けないかもしれないのです。

また、明確な将来のビジョンもないのに音楽さえしていれば幸せ、とか、音楽療法、っていうくらいだから、音楽療法を学んで音楽療法士になれれば、対象者と一緒に音楽の感動を分かちあい、自分もまた、心の健康を維持できるのでは、と音楽療法士を目指しても、自らが抱えている問題が解決できずにその重圧が心に及べば、仲間やファンや対象者たちと、心から笑う事はできないでしょう。
感動による笑顔のもたらされない音楽、笑い声のない音楽療法に、活力源となる力や治療効果は期待できません。

歌手の中には、病に陥りやすい美しくも不安定な自己が愛にもがいて生きる様を物語のようにイメージとして商品化してファンを増やす人もいますが、なかなか、長くは続きません。
そして、ある種の「不幸感」を数多くのファンに共有してもらえた悲劇のヒロイズムの栄光の影を再び捕まえようと、現実逃避により幻想の中で生きる事を選べば、薬物にハマってしまう事にもなりかねないでしょう。そしてもし、本当に心が不幸なままなら、生きて行く事自体を放棄する日が来るかもしれません。そうしたアーティストたちの心の闇は、はかり知れません。

一方、統合失調症の患者さんたちは、もしお薬を飲まないでいたら、大変な事になります。回路が頻繁にエラーを起こしてしまう間違った思考に囚われ、やがて自らを追い詰めてしまい、いわば考え過ぎで死にたくなってしまうのです。
向精神薬は、量が増えて長年の服用になってくると、副作用もあって生活行動が活発でなくなるケースが多い事が心配されるわけですが、そういう方は、心を閉ざすうちに次第に萎縮や老化も始まる脳を病の苦痛から救うために、それだけ「考える力」を制約してあげなくてはならない方でもあるのですね。

ところが、音楽療法を続けてさまざまな症状が改善する方も現実にたくさんいらっしゃるのです。
また、私と5年以上音楽療法士として密に活動した人の中には、数年に渡ってぜんそくから解放された人や、花粉症が治ってしまった人、それから、良性の脳腫瘍がほぼ消失してしまった人さえいます。
実際には、音楽療法士としての活躍ができるか否かはその先にあるのですが、こうした人たちにとっては、音楽は確かに、不安から解放してくれ、「笑って生きる」人生を取り戻させてくれた魔法、と言えるでしょう。

(つづく)

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