音楽療法コラム-企業内音楽療法について

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音楽療法コラム -Ⅲ-

企業内音楽療法について


近代の音楽療法は、かつて第一次・第二次世界大戦やベトナム戦争の頃、戦争によって心身を病んだ多くの傷病兵が長い療養生活を送る欧米の病院で行われたミュージック・ボランティアが、そのさきがけと言われます。
では現代、日本にこうした戦争による傷病兵はいなくなったのでしょうか。

Kbとつややかこ?はん.JPG戦争は続いているのかもしれません。いま、高度成長以来の永く、果てしない経済戦争が生活と夢との狹間に生きる人々に、思春期から老年期に至るまで、心にも身体にもさまざまな不調を起こさせているのではないかと言われます。
企業という集団の中にも、そのような症状を訴える人が1企業内に平均2%程度いるといわれ、音楽療法士もこれらの相談を受けるようになってきました。
仕事や家庭などの悩みの対処に困ると、体にも心にも何らかの変調を来します。身体には、例えば、不眠、胃潰瘍、高血圧、喘息などとなって現れたり、精神面では、不安や無気力のような形で現れます。過食、過敏性腸症候群、不登校に出社拒否、引き籠もりなどの症状や行動になって現れるようになることもあります。うつ病も激増しています。
場合によっては、病院のような専門機関で治療を受ける必要がありますが、私たちは、「大したことない」(本当は大したこと、あるのです。)のに、わざわざ病院に行くために仕事を休めないと考えがちです。でも実は本人は、本当に大したことないとは思えないところまできていることもあるのです。抱え込んだままにしておけば、気力も体力も続かなくなって、事故なども起こりやすくなるものです。

これらの症状のもとは、いわゆるストレスなのですが、ストレスには有益なストレスと有害なストレスがあり、有益なストレスはむしろカンフル剤になる、というような話は聞かれたことのある方も多いでしょう。
たとえば、自分であれ他人であれ集団であれモノであれ、取り組む相手が明確に意識できており、また仮に闘うにしても、その最終目的が自己実現や自分を含めた身内の利益、あるいは克己であるような場合の割とシンプルな闘争心なら有益なストレスになるだろうと思います。
一方、いろいろな種類のストレスがどんどんやってきたり、ストレスが強烈だったり、なかなかすっきり解決できずに長引いて、個人では抱えきれなくなったような場合には、どんなストレスも有害なものに変わってしまいます。

集団は、それ自体が一つの人格を持つ生きものであるという考え方もあります。
解決できていないストレスを抱えたまま会社という集団に身を置けば、その集団の中での自分が持つ、悩んでいる自分個人とは別の人格(これを「仮面」とも言いますね。)を演じなければならないわけですから、ストレスがさらに増幅するのは当然のことです。
しかし、出社拒否や度を超えた新興宗教活動に走るなど、在るべき集団の外にこれらのストレスへの対抗策を求めることは、ストレスの回避にはなっても解決にはなりません。

このように、心に襲ってくるさまざまな不安に、自分の社会的なパーソナリティーが持ちこたえられないと感じたとき、好きな音楽を聴く、歌を歌う、ジョギングをする、気の置けない友達とおしゃべりをする、楽しく体を動かす、スパへ行って体を癒す、など、ほんの一時、心と身体の緊張をほぐし、自分を取り戻せる時間と場所があったら、こうした日常的な危機を乗り越える活力が湧いてくるものですが、こうした趣味や癒しの時間さえも作る気になれないほど、生きるモチベーションが落ちてしまうこともあるのが人間です。

こうして音楽療法は、そうした方々をはじめとする社員のために企業が用意したリフレッシュ・ルームや健康保険組合の管理する企業内福利更生施設などで、少しずつ採用が始まりました。(1)ボディ・ソニック機能を備えた長椅子でリラックスして、いい音楽を聴いて暫しウトウトすれば活力が回復する方の利用を第一として、(2)音楽を使って声を出したりながら、呼吸を整えるためのリラクゼーションを目的としたロー・インパクト・エアロビクスの類のプログラム、(3)心身の感覚をイマジネーションを使ってコントロールする力を養う調整的音楽療法、(4)音楽療法士と1対1でさまざまな音楽を聴きながら、あるいは音楽療法士の即興演奏によるBGMを介して話し、時には共に歌い、その心のふれあいの中で治療を行う能動的・受動的音楽療法や(5)嗜好拡大法など、その投薬に依らないメンタル・リハビリテーションの効果は注目に値するでしょう。
音楽療法に精通した精神科や心療内科の医師も各分野毎に増えています。今後は、これら音楽療法医ともいわれる医師の診断や処方に応じて行われる、医療技術職としての音楽療法士による音楽療法にも、期待が高まってゆくことでしょう。

中井深雪

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