音楽療法における共時性の追求-4-

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音楽療法コラム -Ⅴ-

音楽療法における共時性の追求 -4-

~心理療法としての音楽療法の役割とは~


A氏: 音楽療法におけるテクニックはまだ未開拓な部分が大きそうだから、カウンセリング理論の応用編で行くのか、それともユングの箱庭療法などの延長上で無意識の解釈で進んでいくのか、どうなのでしょうね。
今回のひろちゃんの例のように、亀を壊すとか、産卵の歌で涙を流すなんて聞くと、それが強い心的衝動としてのリビドー(フロイドではなくユングの広い概念のほう)に裏付けられているようにも思えるし…。亀、壊す、卵、共時性という枠組みは、ユング派の人にとっては重要な解釈ができると思います。

中井: そうでしょうね。そこから先はユングの研究になってしまうとすると、それは科学の進歩に添って歩む心理療法家としては、後退になってしまわないかな、というのが一種の壁になって、それ以上踏み込むことに抵抗感が出て来ます。あくまで、確立された心理療法理論、心理療法技術の範囲内での確認作業に留めるべきではないか、というところが私の真意かもしれません。

A氏: そうなると、やっぱり主流は認知行動療法なのでしょうか。でも、動物行動学や利己的遺伝子の概念によってヒトも動物である以上、オスがメスを求めるという性的な行動に適応して進化してきたことが明確になったので、それが精神のいろいろな過程に反映されていてもおかしくない。
性的衝動に何でも還元したフロイドの解釈は恣意的かもしれないけど、性に還元するその発想自体は、最新の科学的知見に合致しているとして見直されるかもしれませんね。
ユングは面白そうだけどオカルト的とも言われます。ただ、人と人との出会いなどに運命を感じることは、私のようなエビデンス重視の立場で勉強して来た人間にも、ないとは言い難いのが困ります。
私は行動主義者だけど、最近少し自信なくなってきました(笑)。
(小声で)やっぱり、共時性ってあるのかな?

中井: つまり、一見偶然みたいな事の重なりが、「え!?」って特別な興味を抱かせたり、注目をさせたりする事は、その人の中で、同一性を刺激する何かが目覚める事には他ならないのでしょうね。
一方、認知行動療法が現花形なのは、精神科に現場を持つ私も目の当たりにしています。
ただ、認知行動療法の対象は、主に社会復帰を急ぎたいうつ病の患者さんたちなので、先天(早期幼児自閉性)・後天(統合失調症)含めての自閉性へのアプローチを得意とする音楽療法を目指す私にとっては、興味が二次的になってしまいます。
でも、現在精神科の病院内では、認知行動療法の対象患者さんたちへの音楽療法適用の可能性も、既にドクターたちが模索を始めています。というのも、患者さんに、音楽が好きな方が多いということ、音楽が、言葉では伝えきれない言葉を補える可能性を、その治療構造に取り入れたい、ということをお考えのようだからです。
精神科治療は、患者さんの主観というのかな、主訴ですが、患者さんがどう思っているのか、どう感じているのか、ということに直接アプローチして、その自覚症状を変えていくことが治療であるところが、他の科での治療とは逆、といってもいいくらい違うところだと、お書きになっていた精神科医の先生がいらっしゃいましたが、うつの患者さんたちには、ご家族を抱えていたりして、治って社会に復帰したい、という強い思いがある方がたくさんいらっしゃるでしょうから、「自分で治る」力になる、という意味での心理療法に、非言語なものとしての、そうした、心の中のなんらかの琴線に触れるような、同一性を刺激して一気に、飛躍的に強めるような体験が取り入れられる意味はありそうですよね。
あーまた新しい概念が出てきちゃいました…(^^;
頭のスタミナが切れてきそうですけど、なんにしても、何事も体験主義者の私には、理論とか実証とかは、常に課題です。
ただ、面白いのは確かだと思いませんか?共時性。ワクワクさせてくれますよね。

A氏: ところで、音楽療法はいわゆるナラティブセラピーの応用編のように素人の私は思いますけど、どのような分野なんですか?

中井: はい。もちろん、実験的な音楽療法研究も世の中には多々ありますし、GIMのような特殊なものや、神経学的音楽療法と言って、比較的効果の検証がし易いものなど、エビデンスセラピーを目指したものの方がまだまだ主流であるべきなのかとは思いますが、実は私の目指すものはまさにそれ、「ナラティブセラピー」の応用編です。
ですから、クライエントの人生そのものを、音楽を介して物語として理解していき、さらにその輝かしいエピソードを、数多くの人に知ってもらうことで、クライエントの人生そのものを輝きのある、希望に満ちたものとして見守り続けることができる、そんな音楽療法を行っていくことで、音楽療法の、「研究」としてより、真にクライエントの人生に役立つ価値を高めて行きたい、という思いがあるわけです。

ひろちゃんの今後の成長変化を楽しみに見守ってみて、いつの日か、この日をまた思い出せたらと思いますね。
いえ、決して忘れることはないでしょうけれど、亀の「語」の「意味」から、動物行動学にまで思索を広げることを教えていただいて、さらにこのシンクロニシティの内容は深まりました。

ちなみに、私のクライエントのひろちゃんと亀の話から発展した今回の討論でしたが、「共時性」はオカルトの匂いがするとちょっと懐疑的なAさん。最後にAさんは、「私の次男の名前はひろちゃん、亀じゃなくて兎を飼っているけど、これって偶然。共時性じゃないからね!」と言いながら帰っていきました。

Aさんの博識には驚くことばかりでした。
本日は、数々の興味深いお話や知的な興奮ともいうべきものをたくさんいただくことができて、
本当に有意義な対談を、ありがとうございました!

中井深雪

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