コラム 施設スタッフのための音楽療法講座

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音楽療法コラム -Ⅵ-

施設スタッフのための音楽療法講座

~音楽療法におけるコミュニケーションとは~


(1)音楽療法がサポートできるもの

先日、今年から正式なご契約をいただいた、とある施設で、さっそく職員研修としての「音楽療法講座」を開いていただき、講師としてお招きいただきました。

講座では、主に

「音楽療法とエンターテイメントの違い」

「音楽療法が心理療法であるのはどういうところか」

という2つの柱を中心に、音楽療法のコミュニケーション性と、それを、施設の職員さんたちがご一緒に参加してくださるセッションの中でどう活かしていけるのかについてお話し、さらに、どんな対象者とも最も共有しやすい音楽的スキルとして、8ビート、サンバ、スウィングなどの「リズム」の表現方法についての実技ワークショップを行いました。

その内容は、有料講座でしたのでここでは掲載を控えますが、テーマの意味が分かるよう、余談としてお話した部分をご紹介することで、ほんの少し、「音楽療法におけるコミュニケーションとは」といったテーマについて、お伝えできるかもしれないと思いました。

音楽療法が心理療法において果たして行ける役割の方法論はさまざまですし、語り始めたらきりがありませんが、

① 対象となる方々と
② その方をサポートしている方々が
③ 楽しみながら
④ 対等にコミュニケーション・スキルを上げていく

ためのお手伝いをすることが、音楽療法の重要な使命の一つではないか、と私は考えています。

そう、お気づきになった方もお有りと思いますが、対象児・者のスキルを上げることだけが目的ではないのです。

というのも、対象となるその方だけがいくら頑張っても、

その方の生活を日常的に支えておられる方々の、
一般の人々とのコミュニケーションではない、コミュニケーションのスキル

が上がらなければ、決してその方の人生は改善されないと思うからです。

その方が笑うのはどんな時?どんな曲で?どんな言葉で?
その方が感動するのはどんな時?どんな曲で?
その方が怒ったり嫌がったりするのはどんな時?どんなアプローチで?どんな言葉で?

その方に、できることとできないこと
その方が、好きなことと苦手なこと
その方が、目指しておられる人格や能力
その方が、望んでおられる対人関係や表現
その方が、発作などを起こす可能性のある状況や禁忌

これらのことを、知ろう、理解しよう、といつも努めながら、セッションを進めるわけですが、これらのことがいろいろ解ってくる頃には、その方と音楽療法士とは、ツーカーの仲なのです。

さて、この「ツーカー」って、どこから来た言葉なんでしょう?

「つうと言えばかあ(ツーカーの仲)」の語源・由来については、インターネットの「語源・由来辞典」によれば、「つう」と「かあ」の語源は諸説あり、正確なことは解っていないそうですが、「つぅことだ」と言った相手に対し「そうかぁ」と答え、内容を言わなくても伝わる関係を表しているとする説が有力なんだそうです。

まぁ直接音楽療法には関係ない話ですが、こうした「ツーカー」の性質は、音楽療法の内容や技法としてはよく見られます。

たとえば、

「かーらーすー」

とセラピストが歌ったとしましょう。
つい、

「なぜなくのー」

と歌い返してしまう方、っています。
ついでに

「からすのかってでしょー」

なんて歌う方もいるかもしれませんが。
…古くて知らない方もいらっしゃるでしょうね。

それから、ドラムで、「トントトトントン」とセラピストが叩いたとしましょう。
そうしたら、「(ウン)トントン」と返してくれちゃう方もあるかもしれません。
(“ウン”は休拍ですよ。)

また、これは「未解決技法」とよく言われる手法なのですが、

「さーいーたー さーいーたー チューリップーのはーなーがー
なーらんだー なーらんだー あーかーしーろーきーいーろー
どーのーはーなーみーてーもー きーれーいーだー」

でセラピストが歌をいきなり止めます。
すると、

「なー」

とつい、歌ってしまう。解決してしまうんですね。
生理的にこうしたくなるのが、人間の感覚なのだそうです。
これは、最後の音が、主音といって、ハ長調ならドの音で終わる時によく見られます。


(2)「サポート」「コミュニケーション」「技法」

さて、こうした音楽療法がよく行う「プレイ・セラピー」ですが、これもまた、まさに心理療法の一分野です。

この、playという言葉ですが、実にさまざまな意味があるのですよね。

あそび、いたずら、いちゃつき、ウケる、うまくいく、おどけ、おもしろい、おどる、かける、からかった、汚ない手を使われた、きみの番だよ、…ごっこをする、…さばき、…をして遊ぶ、しゃれ、しゃれを言う、じゃれる、上手にやる、する、せっせと使う、そよぐ、たよる、ちらちらする、ちらちらさせる、ちらつき、つきあう、つとめる、はたらき、はたらく、博打を打つ、ひいきにする、ひらめかす、ひらめく、ふける、ふざける、ふりをする、ふるまう、…ぶる、へたにやる、ほしいままにする、みなす、やり方、ゆらゆらさせる、…らしくふるまう、わざ、ゲーム、テレビドラマ、トランプで賭けをする、芝居、リバウンドさせる、扱う、演ずる、演技する、演奏する、応じて守備する、音楽を演奏して案内したり送り出したりする、仮病をつかう、楽しむ、活動、活動範囲、株の売り買い、勘にたよる、気晴らし、戯れ、戯曲・脚本、休み・休む・休業、競技、競馬に賭けた、強調、響く、繰り返し影響を及ぼす、繰り返し作用する、軽やかに飛びまわる、劇、言いかける、言われたとおりにする、娯楽、行為、…に基づいて行動する…、再生する、作用する、仕掛ける、仕打ち、試合に向く・試合に出る・試合ぶり・試合運び、事業、自在のはたらき、自由にはたらかせる、自由に動く、自由活動、七色閃転、失業、取り上げ方、取引、守る、手、受け入れられる、出す、出演する、勝負事、上映される、上演、冗談、深く守る、尽くす、水を放射する、随意運動、性交、成功する、静かに過ぎる、絶えず影響を及ぼす(作用する)、組に入れる、操る、争う・争わせる、相手とする、対戦する、態度、大ばくち、第1面に扱う、注目、賭け金・賭け金の総額、賭けをする・賭博、投機・投資、動かす、動き・動きのゆとり、認められる、発射される・する、飛び交う、噴出する、扮する、翻る、無為に暮らす、鳴る、役をつとめる、役割を果たす、遊ばせる、浴びせる、利用する、一緒に演奏する、じらす、とりあえず協力する、協力する、いい加減に扱う、からかう、ぶらぶらする、もてあそぶ、考えをめぐらす、時間を浪費させる、節操なく関係を持つ、いい加減にやる、やってみる、道楽半分にやる、

などなど。こんなにあるのです。
この大半が、音楽療法では使えるコミュニケーション技法のヒントになります。

それから、音楽療法の場合、「目的」の話より、宇宙人とのコンタクトに使えるのでは、とさえ考えられ、あの、「未知との遭遇」だったでしょうか、そこで発想されたモチーフのように、「音楽」という全人類にとっての偉大な財産を道具として、どんなコミュニケーションが可能になるのか、

という「技法」の話の方が、きっと面白いと思います。

「サポート」と「コミュニケーション」は、日常においてもおそらく紙一重のものだろうと思いますが、音楽療法においてはほとんど同義でして、そのほとんどが、「技法」とも同義なのです。

そして、その原点は、まだ歩く前の赤ちゃんと、そのお母さんとのやりとりの中にあります。
仮に、お母さんがいなかった方でも、なぜかこの同じイメージは喚起できるものです。
その先、そうしたものを得られた方、得られなかった方、それぞれに今の自己に対する気持ちと向き合えば、このイメージに対する感情はさまざまでしょうが、そこからはまた別の発達心理過程です。

なぜ、誰もが似たり寄ったりの典型的な母子イメージを持っているのか、それは、こうしたやりとりがおそらく、人間の集合無意識の中に根づいている、最もプリミティブな関係であり、関わりだからなのでしょう。
と同時に、「音楽」においても、母の腕の中で聞いた子守唄こそは、私たちが持つ「音楽」の原始的な記憶の確かな一つなのだと、私は考えています。

ですから、サポートに、コミュニケーションに、迷ったら、私はいつも、ここに戻ります。

研修会では、この他に、1998年に発表した論文のテーマであった、「音楽療法プラットフォーム」についてのその後の私の発展的見解をベースにした、コミュニケーションのための土台の作り方についてや、2003年に発表した演題のテーマであった「5選曲提示技法CUTES」の考え方や使い方についてお話ししました。

研修に参加された方々の明るく真剣なまなざしと、ためらうことなく踊ったり叩いたりしてくださったワークショップの盛り上がりは、ここでの今後の音楽療法を、またさらに10倍楽しみにさせてくださいました。

中井深雪

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